メイの記録 Ⅱ

情報戦サバイバル

幸福の要件と道徳性の判定・「私利私欲がアメリカを支配する」

幸福に影響を与える大事な要因

「銃暴力やコロナウイルスによる死を、無視できるだろうか?」

 

ジョン・ファーマー・ジュニア


How can we ignore gun violence and COVID deaths? Self-interest rules America | The Hill

https://thehill.com/opinion/healthcare/3958998-how-can-we-ignore-gun-violence-and-covid-deaths-self-interest-rules-america/

 

大事な指摘なので、要約してみます。


アメリカ国民は、国家の幸福を測るさまざまな指標に直面している。

消費者物価指数は5%まで低下し、雇用の機会は増えている。
GDP国内総生産)、失業率、インフレ率、ケアへのアクセス、気候変動の影響などの要素を考慮した、幸福の総合的な視点が求められている。

とはいえ、政策決定が誤った指標に基づいている場合、我々は幸福に影響を与える大切な要素を無視してしまう。

もちろん、幸福度を評価する方法はたくさんある。
しかし、私の見解では、アメリカの幸福度を評価する際には、銃暴力による子供達の死と、新型コロナウイルスによる高齢者達の死という、アメリカ特有の2つの現象を無視することはできない。

なぜだろうか?

「社会の幸福度は、最も弱い人々への対応に於いて、最も明らかとなる。」

「人生の暁(あかつき)にいる子供たち、人生の黄昏(たそがれ)にいる高齢者、人生の日陰にいる病人、困窮者、障害者に対してどう扱うかによって、その政府の道徳性は試される。」

我々の中で最も脆弱な人々が、銃撃やパンデミックから無防備なまま放置されることで、自己満足の政治的本質が露わになる。

 

学校等で児童達が銃によって殺傷される事件の繰り返しは、比較的先進国の中でアメリカにしか存在しない厳しい現実を浮き彫りにしている。
米国で20歳未満の子の主な死因は、病気でも栄養失調でも事故でもなく、銃創による。

アメリカでは3歳から18歳までの子10万人あたり 5.6人が銃で命を奪われている。他の先進国でこれに匹敵する国はない。
2番目に多いカナダでは大きく減って10万人あたり0.8人が銃で命を奪われている。

多国間調査によると、銃で死ぬ人の97% はアメリカの子供たちが占めている。


新型コロナへのアメリカの対応記録も、同様に悲惨そのものである。

パンデミック前の2019 年 11 月に、パンデミックへの対応能力は 177ヵ国の第1位に高評価された米国だが、実は、パンデミック初期に、富裕国の中で最下位であり、感染率と死亡率は、世界最悪に近かった。

なぜ我々は、あまり準備が整っていないように見える国々よりも、はるかに悪い状況に陥ったのだろうか?


我が国の大きな失敗の原因として、包括的なコロナ検査を怠ったことなどの要因を指摘したい人もいる。

新型コロナ初期の数か月で、まだ症状が表れる前の人々によって感染拡大されていることが明らかになった。
そこで最も脆弱な人々を守る唯一の方法は、定期的かつ普遍的にコロナ検査を実施することで、症状は出ていなくても感染している人々を洗い出し、隔離し、それで拡散を防ぎ切れないにしても、遅らせ(医療逼迫を防止す)ることだ。

しかし、普遍的な検査が広範に採用されることは決してなかった。
我々は早い時期から、盲目のまま飛行することを選択したようなものだ。

 

2022年初め、入院患者のみを追跡するという政府の決定により、国民全体におけるウイルスの蔓延程度を知ることは、まるで不可能となった。

入院患者のみを検査しても、国民全体での感染蔓延の範囲を知ることは決してできない。


コロナ検査を広く実施するためのあらゆる努力は、まるで飼い馴らしに見えて、反ワクチン、反マスク以上の反発を受け、イデオロギー的な暴動を引き起こしただろう。

そして、アメリカ政府は「共産主義の中国」そっくりだということになるのだろう。

 

リアルタイムでウイルスを追跡してその拡散を抑えようとする試みは、一般的なアメリカ人に対する前例のない監視の口実だと見なされ、暴動を引き起こしただろう。 
政府の真の目的は、コロナウイルスをコントロールすることではなく「我々人間」をコントロールすることだと、まことしやかに我々は聞かされていた筈だ。

 

したがってアメリカでは、きちんとコロナ検査を実施していない。
また、国家として我々は、マスク着用や距離の保持、そしてワクチン接種をきちんと実施していない。
これらの方向へ中途半端な努力をした後、もうウイルスは我々を脅かさない、というふりをすることを我々は本質的に選択した。

それは、我々の84%にとっては、おおよそ正しいのかも知れない。
しかし、以前に予測されていたよりも多い250〜300人が、いまだにコロナで毎日亡くなっている。
死者のほとんどは、人口の残り16%である高齢者だ。
彼らの死は切り捨てられる。なぜなら、いずれにせよ彼らは何らかの原因で死ぬからだ。
現時点で世界的に高い死亡率の 90% を占めているが、それはアメリカだけだ。


我々は、子供達を銃撃から守ることも、高齢者達をパンデミックから守ることもできていない。なぜなら、両者への対応は、最も脆弱な人々を守るための最も効果的で実用的な手段の探求に基づくのではなく、自己陶酔のイデオロギーに基づいていたからだ。

そこで重要なのは「私が望むもの」であり、「隣人であるあなたが必要とするかもしれないもの」ではない。
我々の中核となる第一原則、つまり「私はやりたいようにするので放っておいてくれ」は、銃撃や病気という現実問題とは、まるで無縁の我々にしてしまう。

それは、最も退廃的なタイプの個人主義だ。
それは、執拗で近視眼的な利己主義によって歪曲された自由だ。

それはまた、我が国の憲法の精神に反している。
我々の憲法は、譲歩、和解を必要とするように構成されている。

プラグマティズムがなければ我々のシステムは失敗するように造られている。

 

我々の権利章典の試金石は、危機的な状況においても自己の絶対的な権利を主張することではなく、我々が直面する脅威の深刻さに応じて政府の介入範囲を調整する合理性だ。

 


ジョン・ファーマー・ジュニアは、ラトガーズ大学イーグルトン政治研究所の所長です。
彼は、元米国司法補佐官、ニュージャージー州知事の弁護士、ニュージャージー州司法長官、9/11 委員会の上級弁護士、ラトガース ・ロースクールの学部長、ラトガース大学副学長と法務顧問を務めています。

________________

 

トランプ氏は、銃撃から子供達を守ることも、パンデミックから老人達を守ることも、我が身のことのように実行しただろうか?

 

トランプ氏は、最近8月20日の投稿で「私は伝説的な大差でリードしている」「人々は私が誰か、そしていかに素晴らしい大統領だったかを知っている。だから(共和党の)討論会には参加しない」と書き込んだ。

反省や悔い改めが感じられないナルシストぶりで、果たして米国社会に通じるのだろうか?

日本でも問題視されている宗教団体の信者や元信者の中には、熱狂的なほどトランプ氏に魅せられている人達がいる。もしトランプ氏が大統領に再選されなかったなら、彼等は絶望と憤怒に駆られて暴動を起こしかねない。

ジョン・ファーマー・ジュニアが指摘したような、悲痛な諸々の教訓は、それでは全く生かされず、彼等がますます堕ちていく方向性に突っ走るのではと懸念されている。