メイの記録 Ⅱ

情報戦サバイバル

反ワクチン・反マスクの強権国家を実現して見せたタンザニア革命党

反ワクチン・反マスクを国家的に実現したタンザニア革命党の精悍なジョン・マグフリ大統領。

 

 

 コロナワクチンの接種ゼロ国家であり、ワクチン要望は重罪、マスク着用は非国民、それが、彼の率いるタンザニアだった。

 

 コロナウイルスの存在を信じない国家において「コロナという言葉を使うことは許されていない」タンザニア最大の病院ムヒンビリ国立病院の医師は説明した。

コロナの症状が出ている患者については、急性肺炎として記録するようにと保健省の役人から言われ、他の疾患の患者達と一緒に治療するよう指示された。

それは、かつて武漢における共産党の指令に準じるものがある。

 

 保健省は国民に、マグフリ大統領が勧める代替治療を行うよう通達した。コロナウイルスを除去するとされる蒸気療法のために建てられた施設には、患者の長蛇の列ができた。

国営テレビのコマーシャルは、政府系の研究機関が作った薬草シロップ「コビドル」の効能を称賛した。

 

 しかし、タンザニアソーシャルメディアでは、当局者達が夜中にこっそり遺体を埋めている動画が、何千ものアカウントから投稿され、マグフリ大統領はコロナに関する報道規制を一段と強化した。

ネット上でコロナに関して投稿した個人または団体は、最低1800ドル(当時の約20万円)の罰金か、少なくとも1年の禁錮とされた。

 

 タンザニア政府は、政府に批判的なテレビ局、クワンザTVの免許を取り消した。その理由は、首都ダルエスサラームにある米国大使館が、コロナ感染のリスクが極めて高いのでタンザニアへの渡航を自粛するよう警告を発したという事実を、TV局の職員がインスタグラムで伝えただけのことだった。

 

 マグフリ大統領は、選挙で大統領再選を目指していたため、コロナ被害拡大で評判を落とさないよう、事実を隠蔽し、逆宣伝して、細心の注意を払っていた。

独裁者には、特にそうした特徴がある。

 

 マグフリ氏は選挙公約の一つとして、反コロナと反ワクチンを掲げた。「ワクチンは危険だ。もし白人が(有効な)ワクチンをつくり出せたのなら、エイズのワクチンも作ることができていたはずだ。」

エイズワクチンを未だに作れない欧米が、有効なコロナワクチンを早々に作れる筈がないというのが彼の説明だった。

 

しかし、風邪のワクチンを未だに作れない欧米が、結核、小児麻痺、黄熱病、天然痘などの有効なワクチンを作ってきたことに、彼は全く触れていない。

 

 彼の不正に対する非難が広がる中、コロナ報道禁止に従順なメディアに支えられ、彼は得票率84%で大統領再選に勝利した。

 

 しかし、政府当局者、軍司令官、屈強な護衛達が相次いで(コロナで)亡くなった。その中には、マグフリ氏の側近、ジョン・キジャジ官房長官もいた。

 

 コロナの存在をなお否定していたマグフリ氏は、先祖が眠るチャト村に引きこもり、感染が拡大する首都に戻ることを拒んでいた。世間では、死亡の報道があまりにも多く、お悔やみを示すスワヒリ語「ポレ」がツイッターでトレンド入りした。

 

 カトリック教会の指導部であるタンザニア司教会議の事務局長、チャールズ・キティマ神父は、葬儀の数が急増していると警鐘を鳴らした。2カ月のうちに、神父30人と修道女60人が呼吸困難を訴えた後に死亡した。
ちなみに、マグフリ大統領は熱心な?クリスチャンだという。

 

 国民のパニックが拡大する中、ドロシー・グワジマ保健相は、まるで料理番組のような記者会見を開いた。ショウガやニンニク、レモンの入ったスムージーのようなドリンクを飲んで見せ、急性肺炎を撃退する最善策は自然療法だと国民を安心させようとした。

 

 それから2週間後、マグフリ大統領は約5カ月ぶりに、引きこもっていたチャト村から首都に戻った。

コロナは存在しないと、国民には言いながら、本人は、如何に恐れおののいて警戒していたかを示している。

 

 WHOのテドロス・アダノム事務局長は、タンザニアが「断固たる行動」を取り、コロナに関するデータの収集・共有を実施するよう警告する声明を発表した。

 

 コンド墓地の管理人アリ・サルム氏は、増える一方の遺体を埋葬する場所を確保するために、木を切り続けていた。

「コロナは存在しない、と大統領が言うのを聞くたびに、私達はぞっとした」と彼は言う。「このウソのせいで、どれだけ多くの人が死んだことか!」

 

 マグフリ大統領は、ドドマ大聖堂で新たな重大演説を行った。タンザニアでコロナがまだ流行していると、ついに認めたのだ。(死の前月になって)大統領はマスク着用を初めて国民に促した。ただし、国内で生産されたマスクだ。「外国製マスクは危険だ」と氏は語った。

中国製マスクの危険性が当時、世界各国で確認されていた。

そこで中国人は日本に機械を送り、大阪にマスク工場を作って、日本製として流通させているなどのニュースが流れた。むしろ、その方が高く売れ、人件費は安く済むという。

 

 その後、マグフリ氏は再びマスクを着けずに公の場に姿を見せた。

亡くなった官房長官の後任の就任式で、マスクなしで笑い、冗談を言っていた。それが生前最後の公務となった。

 

 「コロナは存在しない」と言っていた大統領は、コロナに感染し、隣国ケニヤの病院に極秘入院していたが、61歳で死亡した。

 

 何も彼に限らない。「ここはコロナ感染者を埋葬する政府の墓地の一つだが、そう呼ぶことを許されていない」と、墓地管理人アリ・サルム氏は言う。「以前は週に1人くらいを埋葬していたが、ここ1年は、1日17人埋葬したこともある」。

 

 ジョン・マグフリ大統領は、新型コロナウイルスというのは帝国主義の大国が広めている「悪魔の作り話」だと断言していた。

 タンザニアは、コロナウイルスの存在を否定したが、その影響は国内にとどまらない。中国を見倣うタンザニア政府の偽データを、日本でも真に受けて、その宣伝に躍起になっていたのは反ワクチン派だった。

 

こうして、反ワクチン派だけが騙されて喜んでいた。

 

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