メイの記録 Ⅱ

情報戦サバイバル

ゼレンスキーは、ロシアに融和政策の立場だった

ゼレンスキーは、ソ連時代に生まれたこともあり、地域的にも、ウクライナ語よりロシア語が堪能だった。


父親は大学の研究者、母親はエンジニアだった。

祖父はソ連軍の一員としてナチス・ドイツと戦い、ユダヤ人ゆえに親戚の多くがホロコーストで命を落とした。

それゆえに、平和の尊さは、人一倍認識している。

 

大学では、プーチンと同様に法学を学び、その後、プーチンは法の裏をかき、人の裏をかく汚れ仕事を得意として行く中、ゼレンスキーは芸人としてコメディの世界に入って行った。

同じく法学を学んでも、プーチンは法を無視し、上からの権力と恐怖で人心を支配して行く中、ゼレンスキーは下からのお笑いと共感で人心を得て行き、芸人として最大瞬間視聴率が、87.57%という記録的な数字を達成した。


かつてのウクライナ大統領がロシア語文化を排斥する方針を取った時、ゼレンスキーは反対し、ロシア語文化も必要であり排斥してはならないと主張し、文化大臣の辞任を求めた。

彼自身、ロシアのコメディ映画等に出演したことがあり、ロシアも彼の活躍舞台であったし、ロシア民族主義にもウクライナ民族主義にも反対する立場だった。

 

政治風刺ドラマ『国民の僕(しもべ)』では、素人政治家が大統領に当選し、権謀術策が渦巻く政界と対決し、政敵の仕掛けた冤罪に嵌められ、貶められながらも大活躍する様子が描かれている。

まさに、権謀術策で台頭したプーチンと、その仕掛ける罠の中、奮闘する姿は、かつて彼が演じた役割の、シビアな延長線上にある。

 

プーチンが、超資産家のセレブ独裁者、ゼレンスキーが、国民の僕として立つ者、どちらに共感が集まり、どうなるか、天下分け目の戦いになっている。


またゼレンスキーは、クリミア半島の奪還を主張した保守派と違い、プーチン政権のうちは返還要求が到底無理であり、次期政権の時まで解決を待とう、とする慎重派だった。

その点、プーチン政権のうちにこそ北方領土返還を実現するのだと言って前のめりになり過ぎ、プーチンの思う壺に嵌まり、まんまと騙された安倍氏とは、視点が大きく異なっていた。


ロシアはウクライナに侵攻しないと、侵攻の直前までプーチンは言い続けていたが、当初、ゼレンスキーはそれを信じて、彼もまたプーチンに騙されてしまった。
欧米は早くから警告していたのだが。

ゼレンスキーは、リベラル派として理想主義にありがちな油断、脇の甘さが多々あった。

そうした、コメディアン出身の、危機感の足りない大統領は、領土問題で強く要求しない穏健派として、プーチンにとって格好のターゲットになる若造だった。

だからこそプーチンは、ゼレンスキーの甘い隙を突いて一気に潰そうと、ウクライナに侵攻した。

強硬派ではないゼレンスキー相手なら100パーセント楽勝だと信じて。


もし日本の首相が、北方領土問題で強く要求せず、まさかロシアが日本に侵攻することは無いと油断していれば、ロシアは、その甘い隙を突いて侵攻してくる可能性が非常に高いことを、ウクライナの例が示唆している。

徹底的に油断させ、分断させて支配するのが、ロシアの常套手段。


ゼレンスキーの甘さは、日本のお花畑にも例えられていた。
日本のマスコミで早くから活躍しているウクライナ人達は、大統領選の時、ゼレンスキーに投票しなかったという。お花畑だから。

しかし、ロシアが一気に侵攻するや、目のウロコが落ち、ゼレンスキーの態度は一変した。
今や、彼はクリミヤ半島奪還も目指している。

一歩譲ったら十歩以上も踏み込んでくる勢力が存在することを彼は知った。


ウクライナと似た立場にあるロシア周辺国家や台湾にとって、これは決して他人事で済まない。明日は我が身とばかりに、多くの人が心を痛めている。少なからぬロシア人達も。

 

そうした中、北朝鮮政府のようにプーチンロシアを熱烈に支持する日本人達がいる。

それは熱烈な反ワクチン派に多いのが気になるところ。

 

ゼレンスキーが反ロシアの強硬派だからプーチンを怒らせ、侵攻を招いた、ゼレンスキーが悪いと言う人達は、事実を逆転させ、自分を欺いているようなものではないだろうか?