9月29日は、世界心臓連盟が制定した「世界心臓デー」です。
その世界心臓連盟が心臓と酒量の関係について明言している記事をご紹介します。
心臓にとって安全なアルコールの量は無い
少量から中程度のアルコール摂取は心臓血管の健康に良い、という広く信じられている考えには、データの裏付けが無い、と世界心臓連盟(WHF)は述べている。
実際、どんなレベルの飲酒でも、健康的な生活を失う原因となることには明らかな証拠がある、と同団体は述べている。
「過去数十年間で心血管疾患の罹患率は、ほぼ2倍に増加しており、その多くでアルコールが大きな役割を果たしている」とWHFは報告書で述べた。
「アルコールは活発な社会生活に必要である、という主張は、アルコール摂取の害から注意を逸らしてきた。また、1日1杯の赤ワインなど適度の飲酒は心臓血管疾患の予防になる、という主張が頻繁に広く報道されていることも同様だ」と、WHFの委員会メンバーでこの報告書の共同執筆者であるモニカ・アローラ氏はニュースリリースで述べた。
「そうした主張は、良く言っても誤った情報に基づくものであり、最悪の場合、アルコール業界が自社製品の危険性について国民を誤解させようとする試みだ」とアローラ氏は付け加えた。
WHFの結論は、アルコール摂取に安全なレベルは存在しないという、疾病、傷害、危険因子の世界的負担研究(GBD)に基づくランセット誌の最近の報告にも沿うものである。
2019年には、アルコールが原因で約240万人が死亡し、これは世界全体の死者数の4.3%、15~49歳の男性の死亡者の12.6%を占めた。
WHFによれば、少量のアルコールでも、冠動脈疾患、脳卒中、心不全、高血圧性心疾患、心筋症、心房細動、動脈瘤などの心血管疾患のリスクを高めることが示されている。
そうでないと主張する研究は、主に単なる観察調査に基づいており、関連する補因子を考慮していないと同団体は書いている。
これまでの証拠の要約に基づくと、適度なアルコール摂取と心血管疾患のリスク低下との間に、信頼できる相関関係はない。
WHFによれば、アルコール摂取は、がん、消化器疾患、故意または過失による傷害、そして幾つかの感染症の「回避可能な主要危険因子」でもある。
アルコール摂取には、個人や医療システムのコスト、生産性低下、暴力、ホームレス、犯罪行為のリスク増加など、大きな経済的・社会的コストも伴う。
WHFの政策概要は、世界中でアルコール関連死や障害が前例のないほど増加している現状に対処するため、「緊急かつ断固たる行動」を求めている。
推奨される措置には、アルコールの入手可能性に関する規制強化、飲酒運転対策の推進と施行、アルコール摂取障害の検査、短期の治療介入、治療へのアクセス拡大、アルコール広告禁止の施行、一定の最低飲酒年齢確立、アルコール製品に対する健康警告の義務化などが含まれる。
Medscape